[本] ちょっと後味が悪かった古典部シリーズ第5段
ふたりの距離の概算 (米澤穂信)
高校の古典部のメンバーの周囲で起こる日常の謎を解く古典部シリーズ第5段。
同じシリーズの傑作『クドリャフカの順番』が文化祭の出来事だったのに対して、
今回の行事はマラソン大会。
マラソン大会で走っている間に、新入生の大日向友子が急に古典部を辞めると言い出した理由を奉太郎が推理するという話。
趣向自体は面白いのだけど、マラソン大会そのものは盛り上がりに欠ける。
奉太郎の推理に加えて、文化祭のときのような盛り上がりがあれば、傑作になったかも知れないのに。
マラソン大会は、文化祭に比べれば地味な行事かも知れないけど、話のもっていきかた次第で、
『激走 福岡国際マラソン』とまではいかなくても、
それなりに盛り上げることだってできたんじゃないかと思う。
あと、読後の爽快感が無く、ちょっと後味が悪かったところもマイナス。
高校生の日常の謎を解く奉太郎の推理自体は面白いし、長編の中に短編推理を紛れ込ませる構成も良かっただけに惜しい。
それにしても、過去の作品を読んでいれば、よくわかるような思わせぶりな描写がそこかしこに見られるのだが
シリーズすべて読んでいるはずの自分が、その描写が何を意味するのか、どれ一つとして思い出せないことに、
驚いてしまった。
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