[本] ツッコミどころ満載な大学准教授の情けないモノローグを楽しむミステリ風味のユーモア小説
桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活 (奥泉 光)
関西から千葉の大学に赴任してきた桑潟幸一准教授の日常の謎を女子大生が解くユーモアミステリ連作短編集。
またはツッコミどころ満載な桑潟幸一准教授のモノローグを楽しむミステリ風味のユーモア小説。
タイトルから想像すると准教授の桑潟幸一がミステリの謎を鮮かに解く推理小説なのかと思ったら、
これが全然違う。
桑潟幸一はかなり情けない人物として描かれている。事件に巻き込まれて窮地に追い込まれ泣き言ばかり言っている。
およそスタイリッシュという言葉の語感からはかけ離れた人物である。
そんな教授を女子大生が鮮かな推理によって助けるというのがストーリー。
では、桑潟准教授は単なるワトスン役なのかというとそうではない。
全編にわたり自虐的で情けないモノローグの語り手。
それが桑潟准教授の重要な役割なのである。
ミステリ的な面白さよりも、ツッコミどころ満載でありながら、
自分にもそういう弱いところがあるなと共感してしまうモノローグが実に面白い。
モノローグや桑潟准教授の境遇や生活がなんだか妙に生々しくリアルだなと思って、
著書の略歴を確認してみたら人文科学研究所の教授だった。
この話のどこまでが本当で、どこからが嘘なんだ?
ミステリを楽しむよりも、とことん情けなく、底辺をさまよいながらも、意外としぶとく生き残っていく桑潟幸一教授の
モノローグを楽しむユーモア小説。
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