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2011年9月24日 (土)

[本] 傑作にあと一歩足りない本格ミステリを読んで惜しいと思った

夏の王国で目覚めない(彩坂美月)


本格ミステリの舞台として用意された作中劇の世界。ミステリー・ツアーの中の犯人は誰か、そしてミステリー劇を仕掛けたジョーカーの企みは? ジョーカーの正体は? 計算され尽した世界のミステリ。


現実世界を舞台にして本格ミステリーをやろうとすると警察の介入やら何やら障害がある。そこで嵐の孤島のような外界と断絶された世界が用意される。


作者が用意したのは、ミステリー・ツアーの世界。主人公の女子高生の美咲は、幻想的なミステリ作家、三島加深のファン。ある日、ジョーカーと名乗る人物から、「架空遊戯」という名のミステリー・ツアーに誘われる。ミステリー劇の登場人物の役を演じながらツアーに参加し、劇中の謎を解けば、加深の未発表作がもらえるというもの。


作中作とかが大好物な本格ミステリーファンである自分は、この設定だけでもうワクワクしてしまう。


ミステリーツアーに参加したメンバーは「ジョーカー」の指示通りの役を演じ、指示された台詞を喋る。当然、ミステリ小説なので、劇中の中だけで起こるはずの事件がそれで終わることはなく、作品の中の現実世界での事件が起こってしまう。美咲たちは、ミステリー劇の登場人物を演じながら、事件の謎を推理する。


ストーリーの展開も飽きないしテンポも良い。謎の仕掛けも魅力的。どんでん返しも用意している。伏線の張り方も丁寧。一つだけ残念なところが。


それは、読んでいる自分が結末を予想できてしまい、予想が当ってしまったところ。惜しい。これだけの設定を用意したんだから、もっと読んでいて頭がクラクラするような破天荒な話にしてほしかった。


この作家の作品を読むのは2度目なんだけど、どこか行儀の良いミステリという印象を受ける。アクの強さがないというかクセがないというか。もっとムチャクチャして、もっと冒険すれば、もっとすごい傑作が生まれるんじゃないかと思う。今後に期待。

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