[本] いい意味でアホバカミステリの怪作を読んだ
The City & The City (China Mieville)
『都市と都市』(チャイナ・ミエヴィル)の原書。 ミステリとして評価した場合、いい意味で、アホバカミステリの怪作。 面白い。 良くこんな変な設定を思いつくよなあ。ミステリファンも一読の価値あり。
読んだのは、ペーパーバックじゃなくて Kindle版。
古今東西、SFミステリと評される作品のいくつかを読んだことがあるけれど、これほど突飛な設定は初めてである。
2つの都市国家 Beszel と Ul Qoma が同一の土地を共有している。 東西に分かれているとかそんな単純な構造ではない。 隣の家は、Beszel だけど、そのまた隣は、Ul Qoma とか2つの都市国家が1つの土地を入り混じって共有している状態なのである。
お互いの国の住人は、普段、交流することは無い。 というか、小さい頃から相手の国の住人、建造物などを「一切見ない、聞かない」ように徹底的に訓練されている。 お互いにお互いの国は存在しないものとして日々、人々は暮らしている。 生活習慣も使う母国語もテクノロジーの進み具合も違っている。
とはいえ、当然、同じ土地で暮らしているのだから、二国間に跨る事故や事件が起きることもある。 そういう事件の時に登場するのが、正体不明の謎の超法規的・超科学的組織 Bleach で、 何だかわからないけど Beszel と Ul Qoma 双方から恐れられている。
SF的な設定はここまでぐらいで、後は割と普通のミステリ。 殺人事件が起きてその事件を警察官が捜査して...。 勿論、捜査をしていく過程でこの突飛な設定が生きてくる展開が待っている。 そこが妙にリアリティがあって理屈っぽくて面白かった。
各種SFの賞を受賞した作品みたいだけど、最後に著者へのインタビューがついていて著者は
I consider it a crime novel, above all.
と発言している("it"はこの作品『The City & The City』のことです)。ミステリファンも一読すべき作品。
Beszel の警部補が事件の捜査で Ul Qoma に国外出張(?)したときに Beszel にいる部下にいった台詞。
"Same weather over hear as back home."
イギリス英語だからという訳でもないと思うが、英語はかなり難しかった。
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